青森菱友会

箭根森八幡

作: 竹浪 比呂央




 時は平安。本州の北の果て、いまの青森県下北半島は(うしとら)鬼門(きもん)に当たり、悪鬼が住みついては害をなしていた。

 人々は困り果て、遠く京の都まで行っては、名のある武士に鬼退治を頼み込んだ。その願いに応えたのは、武勇の誉れ高き源頼義(みなもとのよりよし)。兵士たちを従え、東北へと進軍する。

 鬼の住まう佐井(さい)(青森県佐井村)へやって来ると、頼義は海水で(みそぎ)し、一心不乱に武運の神である八幡(はちまん)(しん)加護(かご)を祈った。

 祈り続けること七日目。にわかに暗雲たちこめ、波は逆立ち(ひるがえ)り、突風が吹き荒ぶ。そこへ忽然(こつぜん)と現れ襲いかかる悪鬼。身の毛もよだつ恐ろしい鬼の形相に苦戦を強いられる。

 と、その時。一軍の前に(あらわ)れたるは八幡神。(せい)(りゅう)に護り導かれ、神馬(しんめ)にまたがると、神通力(じんつうりき)を宿した弓矢をすっと空へ引き放つ。するやいなや、邪気を(はら)う音が海に鳴り響き、雲を蹴散らすと、悪鬼を射貫いた。轟音(ごうおん)をあげ落ち来る悪鬼。八幡神の助けを得、鬼退治をすること叶った。

 頼義はこれに感謝し、神の(やの)根石(ねいし)(矢じり)がある場所に八幡神を(まつ)ることとした。これが現在も佐井村に鎮座(ちんざ)まします(やの)()(もり)八幡宮(はちまんぐう)である。

 神馬にまたがり、神変の弓矢を引き放ちて、まさにいま悪鬼を射落とす武神・八幡神の姿をねぶたに(けん)(げん)す。


2016年の大型ねぶた紹介 サンロード青森 ≫
掲載画像の無断複写・転載を禁じます。