青森菱友会

大間の天妃神 千里眼と哪吒

作: 竹浪 比呂央




 とある日、越前と大間湊などの船が大時化に遭遇してしまった。越前出身の舵取りの助言により、大間の沖船頭が必死に「天妃様」に祈願した。船は一時波浪にのまれたが、天妃神によって救助された。

菅江真澄『天妃縁起』より

 青森県大間町。『本州最北端の地』に似合わぬ南国の色彩溢れる祭りが年に一度行われる。
 その名も『天妃様行列』女神に乗った輿、目に鮮やかな異国の香りのする衣装を身に纏った神々に竜踊り、そして打ち鳴らされる銅鑼の音や爆竹。土地に福をもたらす神の巡行だ。
 天妃様とは中国の東南沿岸部や台湾で篤く信仰されている道教の神『媽祖』の別名であり、航海の安全や漁業を司る海の民を守る美しい女神である。
 大間町に天妃様が祀られるようになったのは、江戸時代、元禄九年(1696)まで遡る。九州で祀られていたものが勧請されたとも、徳川光圀公が海の民の 励みとなるよう勧請したとも言われる。 どちらにせよ、日本古来の船玉信仰や弟橘比売命伝説と結びつき、交易と共に海を巡り巡って大間まで伝えられたの だ。
 行列には、天妃に調伏改心された悪鬼、千里眼と順風耳が随神として共に祀られる少年神 哪吒太子と随行する。
 世界を繋ぐ海の守り神たる天妃神とそれを守護せんとする千里眼と哪吒。海に四方を囲まれたこの国の安寧と人々の幸福を切に願うものである。


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