青森市役所ねぶた実行委員会
津軽鬼神伝 名刀鬼王丸
作: 外崎 白鴻
昔、岩木山の麓に美しい娘を持つ腕の良い刀鍛冶がおり、一晩で十振り(十腰)の刀を打てる男に娘を嫁がせ、跡継ぎにしようと決めていた。ある日、刀を打つという見たことのない若い男が訪れ、鍛冶場で刀を打ち始めた。
娘が鍛冶場を隠れ覗くと、その男は口から火を吹きながら刀を鍛える鬼神であった。娘は、鬼神が十振りの刀を打ち終え眠ったすきに一本の刀を納屋に隠してしまう。
朝になり、鬼神が刀鍛冶の前で刀の本数を数えると、十振りあるはずの刀が九振りしかなかったため、「とうこしない(十振り無い)」と叫んで逃げ去ったという。
娘が隠した刀は鬼神の名を取り「鬼王丸(きおうまる)」と銘打たれ、巌鬼山神社に奉納された。以来、この地区を十腰内(とこしない)と呼ぶようになったという。
このねぶたは、鬼神「鬼王丸」が刀を鍛えている姿を刀鍛冶の守護神である金子神(かなやこのかみ)が見つめている様子を表したものである。